DEAD PRESIDENTS

日常とその他と、またその他。

DEAD PRESIDENTS

I'm out for dead presidents to represent me.

カニエプロモーションの歩き方

アメリカのHIPHOPシーンにはKanyeWestという天才がいる。
 

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シカゴが産んだ天才児である彼の楽曲の全てが、本来のヒップホップの定義に乗っ取ってるかと言えば疑問符が付くが、そんなものは”We Don’t Care”。俺たちは気にしない。
そもそも、SwizzBeatsやTimberlandなどのいわゆる"楽器が弾けるプロデューサー"らの台頭によって、下火だったサンプリング文化をはるかに上のレベルで復活させたのも彼だ。
 
今や、キムファッキンカーダシアンと結婚した結果、お騒がせセレブという文言で括られがちの彼だが、
ヒップホップシーンに、いやアメリカのシーンに、そしてファッションシーンにまで、誰もが予期しなかった革新を起こし続けていることは紛れもない事実である。
 
グラミー受賞アーティストJohnLegendのデビュー作を手がけ、CommonにはBeというヒップホップ史、そしてジャズ史に残る名盤を提供。AliciaKeysの衝撃的なデビュー作"You Don't Know My Name"のプロデュースを手がけたのも彼だ。
 

Alicia Keys / You Don't My Name 

さらには、JAY-Zと蜜月の関係でジョイントアルバムを出したかと思えば、中指を立てて対立。
Adiddasと開発したスニーカーYeezyシリーズは、発売日には世界各地でそれを求める人々による暴動が多発。今や、NIKEのAirJodanに並ぶ名シリーズとなった。
 
そんなカニエウェスト。今年2018年は5月末から4週連続で自身がトータルプロデュースを務めるアルバムをリリースした。書き間違いではない。4週連続で"アルバム"をリリースしたのだ。しかも、カニエ自身のアルバムはもちろん、今やレーベルのCEOであるPushaTから、KidCudi、そしてなんとNasまで。毎週金曜日のリリースにアメリカ中が騒然となった。

f:id:SHAKARA:20180628034611j:plainNas / Nasir

音楽やファッション全てにおいて、彼が時代を常に牽引しているのは言わずもがなだが、何が人々の話題の中心をカニエウェストにさせるのか。それは、彼のプロモーションの上手さに尽きる。音楽のクオリティは他サイトでも死ぬほど言及されているので、今回は彼のプロモーションに焦点を当てたい。

The Life Of Pablo

先ほど言及した今年のプロジェクトに対して前作にあたるのが2016年に発表したアルバム"The Life Of Pablo"である。このアルバムは、当初TIDAL限定でリリースされ、カニエ本人が"このアルバムは生きている"という通り、配信されてからリリックやジャケ写のデザインなどのアルバムの内容が変わり続けるという、ストリーミング時代ならではの斬新な手法が話題となった。

f:id:SHAKARA:20180628040253j:plainKanye west / The Life of Pablo 

ここでもカニエのプロモーションが炸裂する。

アルバム配信に先駆けて、Rihannaが参加した"Famous"という曲がリリースされた。その曲のリリックで"I feel like me and Taylor might still have sex. Why? I made that bitch famous / 俺はテイラー(スウィフト)とSEXする気がするよ。なぜなら俺があいつを有名にしてやったんだ"とラップ。

これは、2009年のMTVアワードで、当時新人で19才だったテイラーの受賞スピーチの最中に泥酔したカニエが突如ステージに上がりマイクを奪い"いや本当に受賞すべきはビヨンセだから"と発言。テイラー号泣。という事件に起因する。

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その後、スター街道を駆け上がったテイラーに対し、7年後にこのようなことをラップ。それに対し、テイラーも正式に反論した。

しかし、ここで終わらないのがカニエ。その後、Famousのビデオが公開。その中でなんと、自分や奥さんはもちろんテイラーやトランプ大統領までもがヌードでベットに横たわっているビデオを本人たちに無許可で公開。無事に大炎上。結果としてアメリカ国内を巻き込む大論争となり、作品自体も注目される結果となった。(もちろんヌードは本人ではなく、そっくりに作った蝋人形)

Kanye West / Famous

トランプ支持表明。そして「奴隷制は選択だった。」

そして、二年の時を経て2018年。突如Twitterを再開したカニエはアルバムリリースを示唆するとともに、自身がトランプ支持であることを表明。(2016年からライブのMCなどではトランプ支持者であると発言はしていた。)

トランプ大統領のトレードマークである通称MAGA CAPに本人からサインをもらったとツイート。無事に大炎上。

さらには、アメリカのゴシップメディアTMZのインタビューに出演した際に、"Slavery is choice"400年続いた黒人の奴隷制は自分たちが選択したんだ、と発言。無事に炎上。

その後、突如新曲"The People vs Ye"をリリース。ここでなんと民衆役であるT.I.が一連の騒動をカニエに質問し、それを本人がラップで答えるという斬新な手法で世間に回答。さらには、プップピドューと言ってるだけの新曲"Lift Yourself"をリリース。(ただ、ビートはくそドープ)

Kanye West / Lift Yourself

そんな騒動に合わせてか、アメリカの人気番組SNLに出演したChildishGambinoは、最近のカニエの問題発言をいじるコントを披露した後に、衝撃作"This Is America"を突如パフォーム。翌日に公開されたビデオ(ディレクターは日本人アーティスト)がさらに拍車をかけ、今や3億回再生を記録している。

Childish Gambino / This is Americaパーティーしたいぜ!と歌う人々に対して銃を打ち込み、これがアメリカだよ。と歌うその姿は、いやが応にもカニエやトランプに向けられたものと考えてしまう。

良くも悪くもこのような形でアメリカ国内が全てカニエを発端とした話題に独占されることとなった。

 

そしてついに、世界はカニエのリリース月間に突入する。